中小企業の経営計画 – 事業目標の設定

前回、中小企業の経営計画を策定するために、現状の分析をするという部分について書きました。
分析が終わったら次に何をするでしょうか?
次は、将来の経営革新・経営改善のために「目標」を設定します。

分析結果から、自社の強みや弱み、自社の置かれている環境や市場の状況など多面的な情報が得られましたね。
それを元に、
 ・自社の強みをさらに伸ばし、弱みを克服する
 ・自社を取り巻く環境の機会を捉え、脅威を回避する
という事を前提としつつ、将来どのような企業となりたいかということについて目標を立ててみましょう。

「売り上げを~%向上させる」とか「新規顧客を~件獲得し、顧客満足度の向上を図る」、「製品の不良率を~%削減し、クレームを~件以下にする」などなど、様々な目標を立てることができるでしょう。

自社の直面している困難や、安定した収益の中での次の「一手」など、何らかの「想い」は皆さんお持ちでしょう。
分析結果を元に自社のあるべき姿を明確に定義してみましょう。

中小企業診断士は中小企業の経営者の経営計画策定のお手伝いができます。
商工会議所や、中小企業診断士の支援も受けつつ、自社のあるべき姿を改めて考えてみましょう。

経営計画は自社の売れる仕組み・自社の経営理念・ビジョンを込めた大切なものです。
また計画は書くだけでなく、実際に実行を管理するための基礎となる資料になりますし、従業員などとの意識の共有のためにも重要な役割を果たします。
しっかりした経営計画を立てることは他社との競争にも重要な役割を持つものです。

経営計画策定のための現状分析

経営計画策定のため、現状を分析する

 経営計画の策定に際して、自社の経営状況や環境についての現状を分析するということについてお話します。何らかの計画を立てて、経営を「改善」したいと考えている以上は、現時点での自社の状況というものを正しく認識しておく必要があります。現状の立ち位置を正しく認識してこそ、経営革新・経営改善のための方策を誤らず立てることができるようになるわけです。

 現状を分析といっても簡単なことではありません。自社および自社を取り巻く環境も含めて多面的にさまざまな角度から現状を把握しまとめていく必要があります。
・自社の組織の状況
・自社の決算数値の状況
・取引先との関係
・競合の状況
・市場の状況
・技術動向
・法令の状況
等ざっとあげただけでも様々な切り口がありますね。分析ばかりに時間をかけて良いわけではありませんが、多面的な視点で様々な情報を見つめる事は戦略策定にもとても重要です。

自社の経営環境の調査方法

 自社の状況や環境を分析するための情報はどのように収集されるでしょうか。自社の情報ですと、決算数値の収集や社員アンケート、営業記録の収集といった形で、収集すべき内容によって方法も変わってきますね。

 【内部環境(自社)の情報】
  決算数値、社員アンケート、業務フロー、売り上げ情報、仕入れ情報、営業日報、クレーム記録、社内ルール  等
 【外部環境(他社、市場など)の情報】
  顧客・取引先アンケート、白書や政府刊行物・書籍での情報、競合他社のホームページや動向、業界紙、市場調査 等

 様々な情報源から現状分析に必要な情報をピックアップしてくることが大切になりますね。

現状を分析するための手法

 収集した情報を元に分析を進めることになります。現状分析には様々な方法がありますが、一例として、3C分析やSWOT分析を紹介します。

3C分析
 3Cとは、「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字をとったものです。この3つの切り口から分析をする手法です。外部の視点(市場、競合)と内部の視点(自社)の広い視点からキーとなる競争戦略を決定していくことになります。

SWOT分析
SWOTとは、自社の強み (Strengths)と弱み (Weaknesses)、外部環境からみた自社の機会 (Opportunities)と脅威 (Threats)を分析する手法で、それぞれの頭文字をとった名前になっています。この分析で自社の強みをどのように活かすか、弱みをどのように克服するか、機会をどのようにつかんでいくか、脅威をどのように回避するのかという視点で戦略策定に活かしていきます。

 様々な分析の手法がありますが、共通しているのは幅広い視点で自社を捉えて、多面的に改善策を検討していくという部分になります。自社の業務を遂行しながらこのような分析をするのはなかなか難しいかも知れません。「分析なんて難しいな~」と思われるような場合は、中小企業診断士や外部コンサルタントがお手伝いできることもあります。一度相談してみるのもお勧めです。

中小企業の経営計画策定に必要なこと

経営計画策定の内訳

 経営革新・経営改善の為の経営計画を策定するに当たって、まず先日は経営理念の策定について書きました。経営理念に掲げられた自社にとっての「根本の考えかた」は以後の計画や事業活動において常に関連付けられることになります。次に今後の経営計画を考え形にしていくことになるわけですが、どのような事が必要になってくるでしょうか。単純化すると下記のような流れになります。

   ・現状についての調査をする
   ・事業戦略・方針を策定する
   ・目標実現のための行動計画策定
   ・計画の実行管理

おおよそ以上のような要素について計画していくことになるでしょう。それぞれの要素については順番は前後してもかまわないでしょう。たとえば、現状を調査する前に、「やりたいこと」があったとします。その場合は、「方針を決定」→「現状分析を行い目標と現状のギャップをまとめる」→「ギャップを埋めるための行動計画を策定」→「実行についての管理を行う」という流れでもかまわないわけです。
大事なことは自社の現状を正しく分析に、目標とのギャップを認識し、そのギャップを埋めるための行動計画を策定していけばよいということになります。

そもそも、なぜ経営計画が必要なのか。
 ・自社の現状を知り、何が必要であるかを事前に考える機会を得られる。
 ・自社の「儲けの仕組み」を明確にし、何に力を入れるのかを検討することができる
  つまり、自社の経営資源をどのように活用するのが有効かを決めることができる。
 ・目標に向かって、何が必要かを経営者のみならず、社員に周知し、同じ方向に向かうことができる
 ・社外の利害関係者(銀行など)に、自社の戦略の妥当性を説明することができる
 ・事前にある程度のリスクを想定することができ、対策を練ることもできる
 ・もし目標に到達できない場合も、何がどのようにできていないかを検討する有益な材料となる
など、様々な効果があります。
何の戦略や計画もなく、事業を続けても、それは日々の業務をこなしているだけというものになってしまいます。
景気が良かったり、たまたま優秀な社員が頑張れば業績も上がるかもしれませんが、それはどちらかというと偶然の産物です。自社の経営力を上げるためには、儲けの仕組みを自らが作っていく行動が必要になってきますね。

実際に形にしていくのは非常に手間もかかりますし、難しいこともあるでしょう。しかし厳しい経営環境を乗り越えさらに業績を上げていくためには、目指すべき目標と現状の問題など正しく認識していきたいものです。今まで本格的に計画策定をしたことがなく何から初めて良いかわからないという方も多いかと思います。そのような場合は地域の商工会議所や中小企業診断士・税理士などに相談していただければよいでしょう。皆さんの経営革新・経営改善の力になれるはずです。

経営理念を考える

他社の経営理念を見てみる

 中小企業においても経営理念を明文化することは大切なことです。しかしながら、将来にわたって多くの人と共有できるような経営理念を作ると言うのはなかなか難しいですね。
 では他社ではどのような経営理念を掲げているでしょうか?

パナソニックの経営理念
 産業人タルノ本分ニ徹シ
 社会生活ノ改善ト向上ヲ図リ
 世界文化ノ進展ニ寄与センコトヲ期ス

ワタミの経営理念(グループスローガン)
 地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう

日本公文教育研究会の経営理念
 われわれは
 個々の人間に与えられている
 可能性を発見し
 その能力を最大限に伸ばすことにより
 健全にして有能な人材の育成をはかり
 地球社会に貢献する

自社の経営理念を考える

 一例を挙げましたが、いかがでしょうか?。それぞれの企業で素晴らしい経営理念を掲げていますね。
言葉の一つ一つは大げさなものではありません。しかしながら経営者の「想い」のようなものを感じることができるのではないでしょうか。表現の仕方も様々です。

 大切なことは、企業として「こうありたい」と思う気持ちを言葉に表したらどうなるか、と言うことであると思います。経営理念が浸透していけば従業員も自然とその理念に沿った行動や意思決定が出来るようになるでしょう。上記に例を挙げた企業も、経営理念に掲げられた内容と企業のイメージに遊離はないように思いませんか?これは企業理念が浸透しているからであると考えられます。
 大げさな言葉やかっこいい言葉というのではない経営者としての強いイメージを「素直な言葉」に置き換えてみる。そういうところからよき経営理念が生まれてくるかもしれません。様々な業種の経営理念を見て、どのように感じるかなど参考にしてみるのもよいかもしれませんね。
 将来どのような企業にしていきたいですか?どのような目標や理想を持っていますか?改めてそれを考えてみませんか。

中小企業の経営理念

経営理念とは

 会社に明文化された経営理念はあるでしょうか?ないという中小企業の方も多いかもしれませんね。よくよく聞いてみると明文化していなくても会社に対しての強い「想い」は持っておられることが多いですね。
 では経営理念とはなんでしょうか?なんとなくはわかりますが、意外とあいまいになっている言葉かも知れません。
 経営理念とは「経営をする上での、企業がこうありたいと思う根本的な考え方や価値観」と考えることができます。
 「根本的」な考えということが大切です。経営者と社員が根本的な部分での考え方や価値観を共有できていないとしたらどうでしょうか?経営者や社員の皆さんが大きな選択に迫られた時や困難に直面したときに何をよりどころとして決断をするでしょうか?普段の何気ない業務からいざと言うときの決断まで、企業理念はその行動指針となるものです。

経営理念を明文化する

 一人であれば、明文化していなくても理念は心の中に持つことができるでしょう。しかしながら、複数の人が集まった場合には、根本となる考え方は何らかの形で共有したほうがよいでしょう。そのために経営理念を明文化するのです。

 明文化すると言っても大げさに考える必要はありません。企業として「こうありたい」と思う姿を言葉にするわけです。「~に貢献したい」「~の企業になる」など普段から考える想いを言葉にします。全社員で共有すべき企業像を今一度整理してみましょう。

 企業理念は、企業の方針や経営計画の策定を行う際の基本的な考え方ともなります。経営革新支援を受ける際や、将来の資金調達を行う際のステークホルダーへの説明の際にもその理念は活きてくるでしょう。
 企業理念を策定するだけでなくそれを普段から意識して事業の様々な側面に反映し、経営改善に役立てましょう。

中小企業の経営革新計画

中小企業新事業活動促進法

 中小企業を支援する法律として、中小企業新事業活動促進法があります。これは、中小企業経営革新支援法、中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法、新事業創出促進法の3法律を整理統合して、さらに、「新連携」の支援を加えて体系化した法律です。この法律で中小企業の創業や、事業活動の促進(経営革新)、連携の支援を行います。
 この法律にて中小企業の経営革新計画が承認されれば様々な支援を受けることができます。

経営革新とは

 ここでいう経営革新とはなんでしょうか?
それは自社でこれまで取り組んでいなかった以下のような事業活動をいいます。
   ・新商品の開発や生産
   ・新役務(サービス)の開発や提供
   ・商品の新たな生産方式や販売方式の導入
   ・役務(サービス)の新たな提供方法の導入その他の新たな事業活動
上記のような新たな事業活動により、付加価値額や経常利益が一定以上伸びる計画が求められます。新たな事業活動とは、世界初や日本初のような極めて独自性のある活動というわけではなく、「自社にとって」新しい活動で、付加価値や経常利益が伸ばせ、経営改善ができる事業であるということがポイントです。

指標の改善については、付加価値額もしくは従業員一人当たりの付加価値額が年率平均3%以上伸び、経常利益は年率平均1%以上伸びる計画にする必要があります。

経営革新計画承認後の支援

 計画の承認を得られれば、信用保証の特例や課税の特例といった様々な支援を得られます。とはいえ、承認により、必ず全ての支援を得られるわけではなく、それぞれの支援については別々に承認を受ける必要はあります。支援を受けるためにもしっかりした計画作りをしたいですね。

大切なこと

 革新計画を作成することで最も大切なことは、自社の業務全体を見直し、あるべき姿を再定義し、改善すべきことは改善するという一連の活動そのものにあります。しっかりとした計画を立て、目標とする状態に一歩一歩前進できる足がかりを作る。その先に承認があり、支援があります。

計画の立案や申請には色々と難しいこともあります。中小企業診断士などのサポートを受けつつ自社の経営改善を目指していきましょう。

リンク:中小企業庁-経営サポート「経営革新支援」

中小企業の経営計画

経営計画を立てる

日航の経営再建の問題が大詰めを迎えていますね。
おそらく多額の公的資金の注入も行われるでしょう。大企業であるため、社会への影響も考えるといたしかたない部分もあるでしょうね。

中小企業を考えると、このようにはいきません。規模が小さいゆえに、倒産しそうになっても公的資金の注入をしてもらえるわけではありません。やはり普段からしっかりした経営を続けることが大切になります。
あなたの会社では経営計画を策定していますか?

「計画は頭の中にある」「そんなもの作らなくても売上は上がっている」「作っている暇がない」などと考えることも多いかもしれませんね。しかししっかりとした経営を行うためにはしっかりとした計画や目標を立てることが大切です。

経営計画を立てるメリット

経営計画を立てる利点は何でしょうか。

・会社のあるべき姿、進むべき方向を明確にできる
・目標を達成するための、組織としての体制を見直すことができる
・現状を把握することで会社が抱える問題を明確にでき、解決を図ることができる
・目標、行動指針を社員と共有することでモチベーションの向上を期待できる
・資金繰りの見通しが立ち、問題がある場合に素早く対処できる
・銀行や行政の支援を受ける際に信頼すべき情報となる

以上のようなメリットが考えられるでしょう。

国も中小企業には様々な支援策を打ち出しています。そのような支援を受けるためにも経営計画が必要になることが多くあります。どのような目標・計画を持って、どのように行動したいのか、そのためにどのような支援が必要なのかを明確に説明できることは関係者との信頼関係を構築するためにも大切です。

今後の経営改善・経営革新ために経営計画の策定をしてみませんか?
中所企業診断士は、中小企業の経営者様の経営計画策定のお手伝いもできます。相談するのも良い選択です。

これから経営計画に関する記事を順次まとめていきたいと考えております。

正規雇用を支援する政策(若年者等正規雇用化特別奨励金)

失業率は高い水準で推移しております。また就職を希望しながらも、長い間フリーターとして働いているような若者もいるでしょう。中小企業の新規雇用における選択肢の一つとして経験はなくともやる気のある若者に入ってもらうのも良いでしょう。

そのような雇用を支援するための政策として「若年者等正規雇用化特別奨励金」というものがあります。平成24年3月31日までの暫定措置です。

内容としては「長年フリーター及び30代後半の不安定就労者」又は「採用内定を取り消されて就職先が未決定の学生等」を正規雇用する事業主が一定期間ごとに正規雇用している場合奨励金が支給されます。
中小企業の場合は合計で100万円になります。

対象労働者はハローワークの紹介で雇用する必要が有ります。対象となる労働者を紹介してもらえるように求人を出すことが必要になりますね。

また、年長フリーターを正規雇用する場合は、「トライアル雇用活用型」を利用することも出来ます。トライアル雇用については別途「試行雇用(トライアル雇用)奨励金」という制度があり、対象労働者を試行雇用することについての奨励金をもらうことが出来ます。この制度と併用すれば、有能な人材を奨励金つきで雇用する機会を得られるかもしれません。

人材の雇用はどのような会社にとっても大切で難しい課題です。会社にとって必要な人物像を明確にして、このような制度を活用していくことが課題を解決する一つの選択肢になるでしょう。

若年者等正規雇用化特別奨励金、試行雇用(トライアル雇用)奨励金についての詳しい情報は「事業主の方への給付金のご案内」を参照してください。

正規雇用を支援する政策(派遣労働者雇用安定化特別奨励金)

雇用状況はまだ不透明で失業率は5%超の状態で推移しております。また派遣法の改正により派遣業界には何らかの規制強化がされそうな状況になりつつあります。雇用環境の更なる悪化は市場全体へも悪い影響が出るでしょう。中小企業診断士の私としても注視すべきことだと思います。

しかしながら中小企業にとっては、就業できない優秀な人材を獲得できる機会が増えるかもしれません。悪い状況の中でも前向きな対応が求められますね。

現在派遣労働者に来てもらっている会社で、今後その業務について派遣労働者を正社員として雇い入れしたいと考えておられる場合は、「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」の支給を受けられるかもしれません。平成21年2月6日~24年3月31日まで実施されます。

内容としては6ヶ月を超える期間継続して労働者派遣を受け入れており、その派遣労働者を直接雇い入れた場合に、最大で合計100万円の奨励金を受けられます(期間の定めのない労働契約の場合)。
優秀な人材を獲得した上に、奨励金ももらえるのであれば、中小企業の事業主にとってはとても大きな助けになるでしょう。
ちなみにここでいう派遣労働者は、紹介予定派遣ではありませんので、その点注意が必要です。

事業主の方への給付金のご案内は「事業主の方への給付金のご案内」を参照してください。

中小企業向けの緊急雇用対策(助成金)

年末年始から若干株価も上向いておりますが、中小企業にとっての業況はまだまだ厳しいですね。仕事も減り雇用を守ることも大きな課題になっている経営者様も多いかと思われます。

ご存知の方も多いかと思いますが、国でも中小企業の雇用を守るための政策を行っております雇用調整助成金」の制度がそれにあたります。(事業主の方への給付金に関連したリンクは「事業主の方への給付金のご案内」を参照してください。)

この制度では、景気の変動等の要因で、事業活動を縮小せざるを得なくなった事業主の方で、従業員を一時休業させたり、一時的に教育訓練や出向させた場合にその手当又は賃金の一部を助成してくれるという制度です。支給の条件として、直近3ヶ月の売上高(または生産量など)がその直前の3ヶ月もしくは前年同期と比較して5%以上減少していることなどがあげられています。(前々年と比較して10%減少し、かつ直近の経常損益が赤字の場合も含まれます。中小企業の事業主に対しては更なる緩和措置があります)

細かな条件はありますが、やむなく従業員の休業措置を取らざるを得ない事業主の方にとっても少しでも助成金が得られるのは大きいと思います。また休むだけでなくこのような状況の中でも教育に力を入れ次の戦略に備える助けにもなるでしょう。

休業という状況にならないことがまずは大切ですが、やむない状態になった場合の大きな助けになるはずです。
中小企業の経営改善・経営革新のためにも雇用は守りたいですね。