損益分岐点分析(計算)とは
企業は日々の業務の中で売上を上げ、利益を得ていきます。最終的には目標としている財務数値を実現するために活動していると考えることができます。目標を達成するためには自社の現状をある基準や指標で分析し、問題を把握した上で、適切な対処や目標設定が必要になりますね。財務情報はそのような問題を検討するためのデータとして非常に扱いやすいものです。その中で損益分岐点計算は計算方法も比較的簡単で扱いやすいものでしょう。損益分岐点分析とは、費用構造と売上の増減の関係から利益と費用の関係を分析していく手法です。この分析により売上の管理や費用の管理についての情報を得ることができます。
損益分岐点分析(計算)の計算方法
損益分岐点分析では、損益分岐点売上高を求めます。これは、現状の費用の構造から、収支がトントンになる売上高がいくらになるかを計算するもので、計算式は以下のようになります。
・損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率(%)
限界利益率というのは聞きなれない言葉かもしれませんが、以下のように計算します。
・限界利益 = 売上高 - 変動費 ・・・ これは 固定費+利益と考えることもできます。
・限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高
上記の計算式からも分かりますが、損益分岐点計算では、費用構造を固定費と変動費に分けて考えています。一般的に変動費は売上の増減とともに増減し、固定費は売上の増減にかかわらず毎期必ず発生する費用と考えられます。例えば材料費等のように売上原価に入っている費用は変動費と考えられ、正社員の人件費等は固定費と考えられるわけです。
ですので、損益分岐点分析をするには売上原価や販売費及び一般管理費等の細目から変動費・固定費を分けて計算していく必要があります。
細かな計算を行うのは手間であると感じるのであれば、売上原価を変動費、販売費及び一般管理費と営業外費用を固定費と単純に考えて計算するのもよいでしょう。計算を行う基準を明確にして比較や分析を行えば良いのです。理解しやすい方法を検討したいですね。
分析結果の検討
上記では損益分岐点売上高を算出する式のみ挙げましたが、
変動比率(%) = 変動費 ÷ 売上高 × 100
固定比率(%) = 固定費 ÷ 売上高 × 100
損益分岐点売上高比率(%) = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
のような計算も出来ます。
計算結果は単純に出してみるだけでなく、そこから問題点を検討し経営改善につなげていくことが大切です。例えば同業他社や業界平均との比較等で自社の現状の数値と比較することも重要でしょう。また自社の3年程度の数値変化を見ることも必要になるかもしれません。例えば、平成19年度決算の数字を集計した中小企業実態基本調査から中小企業(個人除く)の変動比率、固定比率、損益分岐点売上高は以下のようになります。
損益分岐業界平均(平成19年度決算の統計より)
業種 | 変動比率 | 固定比率 | 損益分岐点売上高比率 |
---|---|---|---|
全業種 | 7.3 | 22.6 | 95.3 |
建設業 | 82.5 | 17.3 | 98.9 |
製造業 | 78.6 | 19.3 | 90.1 |
情報通信業 | 58.1 | 40.7 | 97.1 |
運輸業 | 71.5 | 27.9 | 97.9 |
卸売業 | 84.4 | 14.8 | 95.0 |
小売業 | 69.8 | 30.4 | 100.9 |
不動産業 | 58.0 | 37.1 | 88.4 |
飲食・宿泊業 | 34.5 | 66.4 | 101.4 |
サービス業 | 65.9 | 32.5 | 95.6 |
損益分岐点売上高は100%以下でないと営業活動で利益を出していないと考えられます。建設や小売業等の厳しさが統計からも見て取れますね。
自社の数字と業界平均を比較して問題がないかどうかを検討することも経営改善のきっかけになります。もし悪いのであれば、どこが悪いのかを具体的に検討していきましょう。
また良かったとしても景況や競争関係は急激に変化するものです。ですのでさらなる経営改善が求められます。
参考までに、このサイトで簡単な損益分岐点分析を行えるページを設けております。
細かな分析は難しいかもしれませんが、中小企業診断士等のに相談いただければ様々な経営改善のきっかけになるかもしれません。自社の将来のために様々な検討をしてみましょう。