固定資産をどのように賄うか
機械・装置や土地といった固定資産は、長期的に活用し資金を回収していく資産です。ですのでそのような固定資産は短期の借入金などで賄うものではなく、基本的に自己資本によって賄われることが理想です。しかしながら、中小企業では自己資本が過小な傾向が見られ、調達も困難である場合が多いですね。実際は借入により賄うケースも多いでしょう。借入金に依存しすぎると、中小企業の安全性に問題が出てきます。そのような状況を計る指標が固定比率と固定長期適合率です。自社の現状に即した適切な水準に財務の水準を維持することも経営改善・経営革新には重要です。
固定比率
固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
固定長期適合率
固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債) × 100
固定比率は自己資本で固定資産がどのくらい賄えているかを見る指標で100%以下が理想となります。100%を超えている場合は、自己資本以外の資本で固定資産を賄っているということになります。自己資本の水準が低い場合は他人資本に頼ることになりますが、その場合も、安全性の観点からも長期借入金によってカバーすべきです。それを見る指標が固定長期適合率であり、100%以下の水準が望ましいです。
固定比率や固定長期適合率の水準を良くするためには、固定資産投資を適正化することと自己資本を充実させることが必要になります。固定資産は抑えればよいというものではなく中小企業にとっても重要な資産です。ですので適切なタイミングで効果的な投資を行うことが何よりも重要です。自社にとって何が重要であるのかというビジョンやそのための戦略をはっきりさせることも必要となるでしょう。
また遊休資産等は適切に処分することで指標を改善することもできます。自社にとって必要な資産を選択することも必要です。
中小企業にとって、全方位の戦略は難しく差別化・集中化の戦略が大切であり、資産についてもその戦略に即した選択と集中が必要になってきますね。
自己資本を充実させることは中小企業にとっては非常にハードルが高くなるでしょう。長期的に見てしっかりと利益を出し、利益準備金を積み重ねていくことが大切です。長期借入金を充実させるためには少人数私募債といった社債の発行を行う方法もあります。これについては適切な事業計画や社債の発行条件、投資する側との信頼関係情勢等の取組みも必要になってくるでしょう。自社の経営改善・経営革新には大切な取組みですね。
中小企業実態基本調査より計算した固定比率と固定長期適合率は以下の通りです。
自社の状況と比較し、内容を検討してみましょう。
固定比率・長期固定適合率(平成19年度決算の統計より)
業種 | 固定比率(%) | 固定長期適合率(%) |
---|---|---|
全業種 | 146.96 | 73.11 |
建設業 | 97.38 | 57.06 |
製造業 | 116.67 | 68.51 |
情報通信業 | 81.29 | 49.70 |
運輸業 | 202.11 | 84.51 |
卸売業 | 99.73 | 58.51 |
小売業 | 192.12 | 78.74 |
不動産業 | 243.68 | 84.67 |
飲食・宿泊業 | 766.81 | 107.68 |
サービス業 | 242.95 | 95.10 |
中小企業の経営改善・経営革新には様々な視点から企業の状況を分析する必要があります。中小企業診断士はそのような取組みのお手伝いができます。いつでもご相談ください。