中小企業の下請取引をより良いものにするために
下請代金支払遅延等防止法(下請法)が制定され、下請取引の適正化や中小企業の利益の保護が図られています。しかし現実にはまだまだ厳しい状況で事業を続けている中小企業も多いでしょう。法律が制定されたからといって自動的に取引条件が改善していくわけではありません。法律の趣旨を理解し、親事業者と下請事業者がより良い関係を築いていくことが重要になります。そのような取り組みも大切な経営改善です。それではどのように下請取引を改善していくべきなのでしょうか。
下請適正取引ガイドライン
下請適正取引ガイドラインというものが発行されています。これには、下請取引の望ましい取引事例(ベストプラクティス)や問題のある事例についてまとめられてあり、参考になります。現在のところ11業種程について発表されており、今後も拡大されるかもしれません。
例えば原材料の高騰を価格に転嫁できないということについて、価格改定の協議を四半期毎に行うように改善したり、契約内容があいまいになってしまう部分について、基本契約書で必要な情報を盛り込むように改善したりといった事例を見ることができ参考になるでしょう。自社に近い業種のガイドラインであれば取り組み内容も近いものにできる可能性があります。
下請取引で大切なことは、
・下請事業者と親事業者とを対立するものと捉えない。
・苦しいときこそ、それを共に乗り切る共存共栄のための運命共同体との認識を持つ。
とあります。これは当然のことでして、法律に違反しているから駄目ということで通告したりばかりしていれば、取引先との信頼関係を気付けずに受注も減ってしまうかもしれません。これは下請代金支払遅延等防止法が本来目指している結果ではありません。下請法の規定から外れた取引慣行をお互い是正する努力をし、適正な取引の中でお互いが成長していくことが本来求められることです。
原材料価格の価格転嫁の仕組みは必要ですが、単純に価格転嫁するだけでなく今まで以上に親事業者・下請事業者が経営改善を行いコスト削減をすることで生産性向上できる部分もあるでしょう。そして、その改善部分を親事業者だけが享受するのではなく下請事業者と共にシェアしていくことが大切です。そのためには望ましい取引のあり方や改善についてより良いコミュニケーションを図っていく必要があります。
ベストプラクティスを見ていても感じられることですが、適正な取引を行っている場合は、親事業者と下請事業者が密接な協議を重ね経営改善もしつつ苦しい状況を乗り切っていることがうかがえます。簡単な事ではないですが、必要なことです。
このような事例を参考にし、まずはどのような改善ができるか検討してみましょう。