経営改善のためには自社の強みを知る
中小企業が厳しい競争を乗り越えていくためや他社と連携して新しい事業を行うためには、中小企業自身が自社の強みをはっきりと認識し、その強みを活かした戦略を立案し行動していく必要があるでしょう。
しかし全ての中小企業が自社の強みをはっきりとわかっているわけではありません。中には、「強みがない」とお悩みの経営者もおられるかもしれません。とはいえ、今までしっかりと事業を行ってきたわけですから、何らかの強みは定義できる場合が多いのです。前回は、そのあたりは漠然とした表現で書いておりましたが、もう少し掘り下げる必要がありますね。
それでは、ここでいう「強み」とはどういったものでしょうか。
強みとは、「他社が、なかなかまねできないような優位性・ノウハウ・技術」であると考えることができます。「最新技術を導入して、最先端の製品を作れる」というのは一見強みに見えますが、他社も同じ技術を導入すれば、追いつくことができるため、これも強みとは言えない場合があります。大切なのは、それを活用するような「ノウハウや技術、そのほかの優位性」でしょう。
どのように自社の強みを知るか
中小企業の強みを知るためにはどのようにすればよいでしょうか。こうしなければいけないという事はありませんが、様々な手法があります。
1.SWOT分析
これは企業経営を分析する上での定番の手法です。自社の強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)を内部の視点・外部の視点から分析します。分析するための基礎となる情報がそろっている場合は、良い方法です。漠然とした状態で、自社の強みが思い浮かばないような状況でしたら、もう少し細かく考えていく必要があるでしょう。
2.PPM分析
これは、自社の製品やサービスを市場成長性とマーケットシェアの2次元のマトリクスで位置づけを行って、そこからキャッシュを回収するか、投資を行うか分析を行うことである。自社の今後伸ばすべき製品などを把握するために使います。
製品の位置づけはわかりやすいですが、他者との比較や、製品を作るうえでのノウハウ等は扱わないため、「強み」の分析という意味では限定的な扱いとなるかもしれません
3.バリューチェーン分析
これは、自社の業務を、「材料の仕入れ・調達」~「顧客へ製品やサービスを提供する」までの一連の活動をそれぞれ「価値の連鎖」として捉えて分析する概念です。
仕入れ・製造・物流・販売・サービスやそれに付随する支援活動といった一連の企業活動全体を分析することになります。企業の内部の視点からの強みを知るために最適な方法かもしれません。
バリューチェーンでは、「各活動」ごとに競合企業と比較した自社の強みと弱みを明確にしていきます。
この分析をしっかりすれば、自社のどのような活動によって「価値」が生み出されているかがわかるようになります。
でも自社の強みがなかなか出てこない
分析手法を使ったから強みがすぐに決まるわけではありません。自社の強みをなかなか答えられない中小企業の経営者もおられるでしょう。強みについてどのように考えればよいでしょうか?
強みは、「他社が、なかなかまねできないような優位性・ノウハウ・技術」と書きましたが、これは何も「地域で一番」とか「世界で有数」等という極めて稀有な強さということではありません。日本には中小企業が会社数+個人事業者数で、約400万社以上あります。それぞれの企業が「世界一」とか「地域一」になれるわけではないことは明白です。強みとは特別なことではなく時として「ありふれたこと」なのです。
自社の売り上げはどのように獲得されているでしょうか。長い付き合いの企業があり、その企業の下請けとして経営が成り立っているでしょうか。では、なぜ、その企業はあなたの企業を下請けとして使ってくれるのでしょうか?近いからということでしょうか?
「近い」というだけで「強み」といえないのでは?と思われるでしょうが、発注する側からすれば「近い」ということに意味がある場合があります。「近くて、納期が早いから」ということかもしれません。納期が早いということに着目すれば、自社の製品やサービスをより迅速に確実にお届けする体制を整え、その商圏を少し広げて営業してみるということができないか?という視点にもつながります。また、インターネットを活用して、さらに迅速・広域での営業ができないかなど、新たな視点が出てくるものです。
そのように「なぜ・なぜ」と深く掘り下げていけば、売り上げを上げている本当の要因がつかめてくるものです。それが「強み」であったり経営改善のための課題であったりするわけです。
分析は場合によっては、簡単にできるものではないでしょう。そのような場合でも中小企業診断士のようなコンサルタントは力になることができます。自社の強みを見つけ、経営改善を進めるためにも一度相談してみるのも良いでしょう。