中小企業の知的資産を特定する
「知的資産経営」を行い、経営改善していくために、知的資産報告書を作成し開示するということが推進されております。知的資産報告書というひとつの形にまとめるためにはいくつかのステップがあるということを前回書きました。その一つ目が、「自社の知的資産を棚卸しする」ということになります。言い換えると自社の「強み」が何であるかをまとめるということになります。今までも何度か強みを特定するということについて書いておりますが、ここでもそのことが大切になってきます。経営改善を推進するためには自社が何を目指すのか、そのための強みは何なのかを特定することで、具体的な方策が見えてきます。「強みが見つからない」と考えてしまわずに自社が大切にしているものに目を向けていきましょう。
自社の知的資産を特定するためには「過去~現在」の会社の状況から様々な情報を見つめると良いでしょう。
・自社の経営理念。
・理念に基づいた今までの経営方針、戦略
・戦略を実現するために今まで行ってきた行動
・その結果としての財務状況
・社内の組織作りと過去~現在の状況
・取引先との関係
等様々な情報がありますね。たくさんの情報ですが、これらは収集可能であると思います。
これらの情報を元に、自社の知的資産(強み)を特定していくことになります。そのために使用するツールが何度か出てきているSWOT分析ということになります。SWOT分析は自社の経営状況を強み(S)、弱み(W)、機会(O)、脅威(T)に分けて分析する手法でしたね。これらをまとめることで、現在どのような強みがあり伸ばしていくべきか、あるいは現在どのような問題があり、それをどのように克服したら新たな強みとなっていくかということをまとめる指針としていくわけです。
「弱み」「脅威」は現状は自社にとってネガティブな要素ではありますが、それを克服することで新たな強みに変えられる機会を潜在的に持っているということを忘れてはいけません。現状「社内のコミュニケーションがとれず経営が非効率になっている」という状況があったとすれば、「社内のコミュニケーションを円滑にするためにどのような方策を採るべきか」ということを考え行動することで、克服できるかもしれないのです。その結果として「社内のコミュニケーションが円滑にできた」のであれば、その組織の行動そのものが新たな「知的資産(強み)」となるわけです。一つ一つが経営改善のプロセスそのものですね。
強み・弱み等の分析が終わったら、次はその分析結果を経営分析に活かすために整理することになります。具体的には、強みと機会から「強みを活かしてチャンスをものにしていく方法は何か」、弱みと機会から「弱みを克服してチャンスを確実に手に入れる方法は何か」といった風に現状をよりよくするための方策を考えていくわけです。このような一連の分析作業により、中小企業が次に何をするべきか具体的にイメージができるようになるでしょう。