検証の積み重ね | 中小企業の経営力向上の地道な努力

科学的な取り組みについて経営で教訓とすべきこと

私は理系出身というわけではありませんが、科学や生命についての技術や研究、発見のお話が好きでよく本を読んだりもします。内容の半分もわからないことも多いのですが、それでもそのわからない謎に満ちた部分について考えたり謎の片鱗に触れられる感覚が好きだったりするのです。
そして、もう一つ、科学というのは、その発展の過程で多くの科学者が、より「正しい」と思われる姿勢で研究をしているように感じるという事を好ましく思っています。

先日、「ニュートリノが光よりも速いという実験結果」が発表され、大いに驚きました。アインシュタインの相対性理論に矛盾する結果が出たわけで、その内容によっては、現代物理学の基礎が大きく書き換えられることになります。相対性理論は実生活でも応用されており、GPSなどはその理論を前提とした技術となっているようです。GPSが正しく動くことは相対性理論にその技術においては、矛盾がないということも表しています。ただ、それも何らかの形で書き換えられる日が来るのかもしれません。

ここで重要なのが、今回の発表は「決定」ではなく、他のグループによる検証を求めるという意味も含まれているという事です。他の実験により再現できなかったり、誤りが指摘されれば、この実験結果は否定されます。これが「正しい」あれは「間違っている」というのではなく、実験や検証を繰り返す中で証拠を積み重ねていって、「より正しそう」な理論を導き出し、応用していく。それが科学なのではないかと感じています。よって、様々な実験や議論と検証により物理学の理論はさらに洗練されていくことになるのではないかと思います。

このような実験・検証を繰り返し、正しい方向に向かおうとする姿勢は、経営においても多くの教訓があると思います。
経営も答えがあるわけではありません。事業を行ってみて、顧客の反応に応じて、検証・修正を行いより良い方向へ経営を導いていくという取り組みが行われてしかるべきであります。しかし、不況が続き、厳しい競争環境のなかで中小企業をはじめ、小さな会社では変化を嫌うことが往々にして見られます。

科学的な思考を経営にも入れてみる

科学的思考を経営にも入れるといっても特別なことではありません。様々な取り組みがすでに多くの企業においても行われていることです。全く新しい概念というわけでもなく、科学において行われる「正しい」考え方は応用が利くものだという事です。

ではどういう考え方かというと、
 仮説・実験・検証
という取り組みを経営においてもしっかりと行うという事になると思います。俗にいうPDCAサイクルを回すというのはそれに近いものだと思っています。

まずは仮説というのは経営においては「計画(P)」にあたるでしょうか。しっかりとした計画や方向性を示すという事。
そして、その計画は「計量可能」であるということが重要です。達成したかどうかという事がわかるためには何らかの形で計ることができることが重要です。「売り上げを伸ばす」ではどこまで伸ばせば達成なのかがあいまいになってしまいますね。

そして実験にあたるものが「実行(D)」にあたります。計画をもとに実行する段階です。これも計量できる取り組みであり、また再現が可能であるという事も重要です。たとえば業務マニュアルや業務フロー、計画に向けたアクションプランを従業員に浸透させ、その内容に即して行動するということに当たります。このような考え方がないと、経営における行動は場当たり的になり、一部のスーパーマン的な社員による賢明な努力により、時として計画は達成されるかもしれませんが、そうでない場合はちぐはぐな行動により計画は達成されないことになるでしょう。

そして検証はPDCAの「評価(C)」が対応します。自分自身だけでなく他者による検証もできること。そのためにはここでも計量し、測定可能であることが重要です。
そして最終的にその評価をもとに、計画を見直していく(A)というプロセスになります。

科学においても経営においてもその計画から仮説をもとに実行し検証するというサイクルを繰り返す基本的な考え方があります。それが自社にも浸透しているかどうかはチェックしてみる価値があります。

また科学においては、「反証可能性」という事が重視されます。これは反証も立証もできないことは科学ではないという考え方です。経営においても計画を事業の中で達成できたかどうかを判定できなければ、取り組みに意味がなくなってしまう可能性が出てきます。また反証できないというのも問題が出てくるでしょう。反証が不可能というのは経営においては「ワンマン経営」があたるかもしれません。
経営者の出した方針に誰も口を出せないとすると、これは本当に「経営」でしょうか?
時として様々な意見を考慮し、より良い経営を目指す姿勢が重要になってきます。反証を許さない仕組みや考え方が人の中に浸透しているとすると、その組織においては新しい取り組みや反対意見が出ずに、経営者にぶら下がっている社員ばかりになってしまうかもしれません。「反証」というここでの意味は科学と経営においては異なるかもしれませんが、重要な示唆を含んでいるように感じます。

経営においては、感情や経営者の夢・意思というものが第一義的に大切になってきます。しかしながら実際の事業の中では、しっかりとしたPDCAとその管理が重要になるという側面もあります。「より正しい」という方向性を目指して経営は常に進化していくべきだと考えておりますし、CONSULTING OFFICE 3Sでは中小企業の経営者様のより良い経営をサポートいたします。是非ご相談ください。

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