夏場の電力不足を睨んだ中小企業の経営改善
4月になり、火力発電所の稼動や気候も暖かくなってきたこともあり、6月頃までは計画停電も行われない見込みになっております。しかしながら6月以降電力需要が増してきた際には電力供給が需要に追いつかない想定であります。夏場の気温の推移は分かりませんが、昨年のように暑くなる場合は、相当程度の電力不足が見込まれます。
今後の対応としては、現在のように需要動向により計画停電を行うという「停電ありき」の考え方ではなく、電力使用量を社会全体で平準化・削減を行い、原則停電を行わないという考え方で進むようです。
もちろんそのためには、大幅に不足する電力供給の問題に産業・家庭含め全体として取組んでいく必要がありますね。
経済産業省が、電力需給対策のために様々な情報を発信しています。これらの情報に今後も注目していく必要があります。
中小企業の経営におきましては、大規模の投資などが困難な場合が多く、自家発電などのような設備もない場合がほとんどです。そのような制限の中でできることを考えていく必要があります。そのためには、経営全体のフローを見直し、経営改善の視点で見直すことが有効になるでしょう。電力供給が減ることは非常に不便ではありますが、中小企業にとって光熱費の削減に取組むことは財務的な視点に立っても無駄なことではありません。もし光熱費が20%程度抑制できた場合、自社の損益はどのようになるでしょうか?20%は今夏小口需要家に期待される電力削減量の目安です。
中小企業・個人企業に求められる取り組みの具体例
経済産業省の資料にもありますが、電力使用量の削減のための具体例がいくつか紹介されています。中小企業の経営においても取組める内容が多くあるでしょう。
・生産プロセスの合理化
・省エネ設備の導入
・操業時間、シフトの見直し
・空調温度の設定変更(夏季は、設定温度を高めに)
・照明の削減
・パソコン等の使用量削減
等が考えられますね。省エネ設備の導入はハードルが高い場合もありますが、導入する予定がある場合は、省エネの視点での導入が不可欠です。また投資を考える場合は、省エネ効果による費用削減と投資額との費用対効果で効果的なものを導入することが長い目で見た場合の経営改善に繋がるでしょう。
上記した取り組みの中でも、プロセスの合理化や操業時間・シフトの見直しは中小企業の業務プロセス全体を見直し経営改善していく取り組みになると考えられます。難易度も高いですが、効果的であり、中小企業の経営改善という視点からも良い効果が期待できると考えます。
電力需給対策においては、電力使用の絶対量を減らすという考え方と、ピークをシフト(電力使用量の山を慣らす)するという考え方の2つがあります。電力は貯めておけるものではないため、電力使用の少ない時間帯・時期に電力を使う業務をシフトするということは非常に効果的でしょう。
例えば、電力使用量が時間帯により20・100・20となっていた場合、総使用量は140ですがピーク時には100を使用しています。この使用量の山の高さを低くし、全体として、40・50・50という使用の仕方に業務を見直した場合、電力の総使用量は変わりませんがピーク時は50と変更前の半分になっています。社会全体でこの取り組みができるならば、停電を行わなくても良い可能性があるわけです。
もちろんこの方法は簡単ではありません。日本のように省エネの取り組みが比較的進んでいる社会においては劇的な改善ができない場合もありますが、そのような取り組みをあまりしていない企業においては非常に効果的となる可能性があります。
このような対応を行うためには、自社の現在の業務の流れを把握した上で、電力ピークとなるプロセスを見直し、電力使用を平準化していく必要があります。全社的な取り組みも必要ですし、コンサルタントの協力も必要になってくるポイントであるため、気楽に相談していただければと思います。
なお一般家庭向きの情報ではありますが、各種家電製品の省エネ対策による効果試算(PDF形式 内閣府:東日本大震災関連情報)も公開されています。家電製品の使用方法による削減効果について具体的に記載されていますので参考になりますね。