ITシステム開発の難しさ - 中小企業・利用者側の視点での課題

特許庁の次期基幹システム開発の失敗からの教訓は?

中小企業・零細企業にとってもIT活用は必須となっている現状ではありますが、システム開発や導入には特有の難しさがあるのも事実です。

少し前の話ですが、特許庁が次期基幹システムの刷新を行うプロジェクトの失敗が公表されていました。

開発に投じた金額は50億円超であり、非常に巨額です。

これほどまでの巨費を投じたにもかかわらずなぜ失敗したのでしょうか?

そして、これは、中小企業においてITを導入する際にも念頭に置いておかないといけないことであります。規模の大小はありますが、同様のことは小さなシステムにおいても起こりうるものです。

 

そもそもなぜこのような失敗が起きたのでしょうか?原因を見て見ますと、

  • システムの発注先が特許庁の業務に精通していない
  • 技術評価が低いが低コストのベンダーを選定した
  • プロジェクト開始後に方針や設計が二転三転した
  • 特許庁の担当者も二転三転した

などいろいろな要因があるようです。

受注したベンダー側の問題ももちろんあるでしょうが、今回は、利用者(顧客)側の抱える問題について述べます。

一点目の、発注先の選定についてですが、選定において、顧客要望に応えられるベンダーを選定することは大切なポイントです。もちろんその評価は難しい物であります。今回のように技術評価が低くても選択するというケースはもちろんあるでしょう。このあたりのバランスと評価をどうするかというのは利用者側の責任において決めないといけません。

後付けで、ベンダー側にノウハウがないということをいうことはできます。しかし、例えば、今回のケースのように「特許庁の業務」に精通している人が、世の中にどれだけいるでしょうか?はっきり言って、特許庁や特許そのものの業務に精通しているベンダー自体少ないと考えるべきです。一般的な販売や生産、WEBなどのシステムとはその点も違っています。ベンダー側に経験がないということも十分にあり得るわけです。

そういうケースにおいて、では、経験がないからどのようにコミュニケーションを取ったり、情報を整理すれば、ベンダーにわかりやすく伝わるのか?ということを顧客側がフォローしていくことも必要であります。お金を払えばあとは、相手がやってくれるというのではなく、プロジェクトを共同でどのようにすれば成功に導けるのか?という視点です。

業務に精通していないのであれば、その穴は顧客も一部埋めるようにフォローしていかないといけません。(もちろん受注側の相当の努力が前提ですが)

 

2つ目の設計などが二転三転するケースですが、これも大問題です。そもそも何を作るのか、作りたいのかという要求は顧客側が整理できないといけません。プロジェクトが始まってから内容がひっくり返るのであれば、失敗は確定してしまいます。もちろん走りながら調整する部分があるのは当然ですが、程度というものがあります。

システム発注する前に「要求定義」をしっかり行っていくことが必要なのですが、中小企業におけるシステム開発についても非常に重要です。

 

3つ目として、担当者がコロコロ変わるという点も問題です。

プロジェクトの中心となるメンバーはおいそれと変えるべきではありません。これも失敗のもとであります。そして、プロジェクト責任者に十分な権限があるかどうかも要チェックです。

例えば今回のケースにおいては、当初はシステムの全面刷新が目標として掲げられていました。全面刷新なので、当然現行業務にも変化が起こるはずです。となると、プロジェクト責任者には、「現行業務を変更するための最終的な権限」が付与されていなければいけません。変える権限がないのに全面刷新など不可能です。そういった点も注意が必要ですね。

 

いくつか指摘しましたが、システム開発は簡単ではないということを念頭に置いておく必要があります。

顧客側もそれなりの知識やコミュニケーション力、体制が必要であります。その体制がなければ、社外の専門家やコンサルタントに協力を依頼するということも必要です。

 

小さなシステムであっても、契約後に内容が二転三転したりすれば、あとになってびっくりするような追加請求がきたりしてしまいかねません。最初にケチりすぎず適切な投資の思考も必要ですね。

 

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