様々な手法とバランススコアカードの関係
中小企業の経営改善・経営革新において、バランススコアカード(BSC)のように長期・短期、財務・非財務の視点でバランスを取った目標をたて、管理していく手法は厳しい経営環境の中で事業継続していくために必要となる考え方です。しかしながら、このような手法は大企業で使われるだけのものではなく、中小企業であっても非常に重要であり、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションのためにも効果的であります。そして、新しい手法を導入していくためには経営者自らのリーダーシップと熱意が必要であることをこれまで書いてきました。しかしながら、日々の事業活動に忙しくなかなかこのような「手法」を導入することには抵抗があるかもしれません。また、他の手法や計画策定作業などを導入している中であれば、さらに新しいと思われるような手法を導入するのは従業員にとっても重荷になってしまう可能性がありますね。バランススコアカード(BSC)のような業績管理手法を導入する場合は、そのことが過度な重荷になってしまわないように考慮する必要もあります。そのためには既存の経営の手法とバランススコアカード(BSC)を一つに統合して運用していくことで全体としての負担を和らげることも可能でしょう。
バランススコアカード(BSC)は以下のような経営活動と統合して運用することが可能です
・企業の中・長期経営計画、経営革新計画
・従業員の業績評価
・中小企業の知的資産経営との融合
企業の中・長期経営計画、経営革新計画
中小企業では現在も様々なステークホルダーとのコミュニケーションのために経営計画を策定しているでしょう。中には日々の業務に忙殺され、計画等は立てていない企業もあるかもしれませんが、経営改善・経営革新には経営計画を策定することも重要です。経営計画は経営改善・経営革新の仮説をステークホルダーに説明するためのものです。例えば、銀行から資金調達する場合も必要ですし、従業員が同じ方向を向いて目標達成していくためにも必要となります。
バランススコアカード(BSC)は従来の経営計画でありがちな財務の視点に偏った計画をバランスの取れたものに置き換えることができます。バランススコアカード(BSC)の策定とそのアクションプランと管理指標の設定により従来の経営計画をより「実行可能」なものにできるという効果もあるでしょう。
従業員の業績評価
従業員やチームの業績評価のプロセスは既に導入している中小企業も多いでしょう。しかし、その評価は評価者によってもあいまいなものになっていたり、個々の目標が企業の経営戦略とマッチしていなかったりする可能性があります。バランススコアカードとその業績管理指標と関連付けて個人やチームの目標を策定し、評価するように活用すれば、企業と従業員の目標の整合性が取れるようになり、評価もしやすくなります。従来の業績管理のプロセスも改善可能となるでしょう。
中小企業の知的資産経営との融合
中小企業の知的資産経営については以前も記事にしたことがありますが、財務指標に現れない企業の強みやノウハウといったものを知的資産と捕らえて活用していこうという考え方があります。中小企業の競争力の源泉となるべき知的資産を活用することと、財務と非財務のバランスを取った業績管理をしていこうとするバランススコアカード(BSC)の考え方は基本的に整合性が取れたものであり、両者を統合することでより効果が出てくるでしょう。
中小企業の経営改善・経営革新のための手法には様々なものがありますが、それを個別のものであると考える必要はありません。従来の経営計画や業績評価、各事業活動とバランススコアカード(BSC)は目指すべきところは同じであり、一つに統合していくことが可能なのです。
様々な取組みの中でもバランススコアカード(BSC)のようなバランスの取れた視点で考えてみることも効果的かもしれませんね。