食中毒事件から中小企業のリスク対策について考える
焼肉チェーン店での食中毒事件が連日報道されています。今回の事件では死者も出ており、非常に重大な事態になっております。企業として絶対に避けるべき事態でありますし、お客様の未来、幸せ、信頼のすべてを結果として奪ってしまうことになり、関係者のすべてにとって非常に不幸な出来事でありました。
なぜこのようなことが起こってしまったのか、どうあるべきであったのか、この出来事についての教訓をどのように活かすべきなのか、深い内省と改善に向けた具体的な行動が求められます。
このような事がなぜ起こるのでしょうか?中小企業でも程度の差こそあれ、起こりうる事態です。それは製品の品質の毀損であったり、機密情報の漏洩であったり、違法行為であったり。今回の事件では生命にかかわる事態になったということが非常に大きなことなのです。
中小企業の経営でも同様で、企業の活動には、何らかのリスクが潜んでいるはずです。食品関連の製造業であれば、今回のように衛生管理上のリスク、販売であれば、賞味期限・消費期限・保管上のリスクがあるでしょう。食品でなくても顧客や従業員に対する安全確保上のリスクがあるかもしれませんし、品質保持上のリスクもあるでしょう。
第一歩としては、事業活動上のどこにリスクがあるのか、それはどのようなものかを認識することです。このようなことは従業員個人にまかせきりになってはいけません。企業の取り組むべきリスクから目を背けることになるからです。
焼肉店では、仕入れた肉をそのまま生食として使用しました。食中毒のリスクがありますが、「周りの店もやっているから」等の理由があったのでしょうか、何らかの理由で、このリスクから目を背けました。生食を提供するとして、安全管理上定義していた対策を行っていませんでした。それにも正しいかどうかは別として理由があったのかもしれません。理由を付けてリスクから目を背けたのです。リスクの「否認」です。否認というのは、「認めない」ということです。リスクの存在を認めないこと。目先の売上や日々の業務にとらわれて、リスクから目を背けることです。これは非常に危険なことです。
「うちに限って大丈夫」という想いがあるのかもしれませんが、リスク事象が発生してからでは遅いのです。
なぜこのようなリスクから目を背けるのでしょうか?それは目先の売上や費用低減のためであったり、日々の業務の忙しさからかもしれません。何らかの理由を付けて、目を背けるようなことが現実に起こっているのだと思います。
当年の売上や利益を捨てるように「見える」選択をして、リスクを避ける行動を取る勇気を持てるでしょうか?それを従業員個人の責任として押し付けず、会社として経営者としての矜持として実行できているでしょうか?そのための具体的なルールを定めているでしょうか?
このような部分があいまいになってしまっていると、リスク事象がある日突然発生します。立派なマニュアルがあったとしても知らない間に形骸化しているかもしれません。それでは意味がありませんね。
さらに、業務ごとに守るべき法律・ガイドラインもあるでしょう。今回の焼肉の事件については、生食についての通達もあったはずです。事業を行う前提としてそのようなルールを無視してしまってはどれほどの売上が上がっても意味がありません。しっかりと目を向けるという姿勢が必要です。
自社の業務プロセス上のリスク事象を把握しているでしょうか?リスクの発生を抑えるためあるいは避けるための経営改善を重ねているでしょうか?
これを機会に一度立ち止まってみる勇気も必要でしょう。