中小企業の財務体質・資本構成
企業の資金調達の方法は大きく自己資本によるものと負債(借入金)によるものに分けることができます。借入金は借りているものですから、利益の有無にかかわらず必ず利息を支払う必要があります。また借り入れ自体短期的・中期的に返済を行う必要があるものです。それに対して自己資本については利益に応じて配当を行い、基本的に返済も必要がないという特徴があります。これだけ見ると自己資本が多いほうがよいわけですが、中小企業の場合自己資本を出資しているのが経営者のみという場合も多く大企業のように多額の自己資本を確保するのが難しいという現実があります。そのような中でも自己資本と借入金のバランスを保つ努力が経営改善・経営革新には必要になってくるでしょう。
借入金は利益の有無にかかわらず金利の負担をしなければいけません。もちろん借入利率以上の利益率を確保できるのであれば自己資本利益率(ROE)が向上するということもありますので、借入自体が悪いものでは有りません。しかしながら、借入に依存しすぎると企業の安全性という観点から問題が出てくるということになります。
資本構成を分析する指標として、自己資本比率と負債比率というものがあります。まずは自社の状況を分析してみましょう。
自己資本比率
自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資本 × 100
負債比率比率
負債比率(%) = 負債 ÷ 自己資本 × 100
自己資本比率は高いほうが、負債比率は低いほうが資本構成としては安全であると考えることができます。では資本構成はどのように改善できるでしょうか。
自己資本の確保の方策としては、内部留保・増資・株式公開という方法が考えられます。
株式公開については中小企業にとってはかなりハードルが高いでしょう。また増資についても経営者やその親族が株主となっているケースが多く簡単に増やすことができるものではないことも多いでしょう。継続的に経営改善していくという観点からは内部留保を増やしていくということが大切になると考えられます。
内部留保は中小企業が利益を上げることにより増やすことができるものです。もちろん単年度だけで見ると大幅な増加は望めませんが、長期的な視点で継続的に利益を上げていくことが必要になります。赤字や借入金の返済で内部留保を食いつぶすような状態が続いていると資本構成は悪化が続いてしまいます。継続的な経営改善により資本構成も理想を目指していきたいものです。利益は最終的に税金や配当金として出て行く部分もありますが、配当・役員賞与等が適正な水準かどうかもチェックが必要でしょう。
自己資本の増加と同様に適切に借入を削減することも大切です。借入金が多額になると利息負担も大きくなります。利益が出ているときにしっかり返済を行うということも重要になるでしょう。投資と返済のバランスについて考えることも経営改善・経営革新には必要な意識です。
最後に中小企業実態基本調査より業種別の自己資本比率と負債比率を一覧します。同業種の状況や自社の経年の比較により資本構成の状況を知り、経営改善について考える機会を持ちましょう。中小企業診断士も経営改善・経営革新のお手伝いができます。気楽にご相談ください。
資本構成(平成19年度決算の統計より)
業種 | 自己資本比率(%) | 負債比率(%) |
---|---|---|
全業種 | 30.57 | 227.10 |
建設業 | 33.00 | 203.04 |
製造業 | 37.70 | 165.26 |
情報通信業 | 38.35 | 160.79 |
運輸業 | 28.87 | 246.34 |
卸売業 | 31.04 | 222.22 |
小売業 | 23.77 | 320.75 |
不動産業 | 23.77 | 320.72 |
飲食・宿泊業 | 10.32 | 868.74 |
サービス業 | 25.50 | 292.14 |
従業員規模ごとの構成は出していませんが、自己資本比率などは規模が大きくなるほど大きくなる傾向が見られます。それを踏まえて自社の状況をしっかり押さえていきたいですね。