流動負債の水準も分析する
中小企業の資本の回転率を計算し、その効率性を見るのと同様に債務の回転期間を分析することもできます。売掛金などは回収期間が短い方が資金に余裕が出来ますが、買い入れ債務の場合は、基本的には支払までの期日が長いほうが資金繰りに余裕が出ます。経営改善のためにバランスの取れた債務の水準に近づけていくことも重要であり、業界水準との比較等を通じて問題点を探っていくことが大切です。
買入債務回転期間
買入債務回転期間(日) = (支払手形 + 買掛金) ÷ 売上高 × 365
買入債務を支払うのに売上高の何日分が必要になるかを示しています。この指標は長期間になるほど資金繰りに余裕があると考えることも出来ますが、買入債務が同じ水準で売上高が減少している場合も大きくなります。そのような場合は、期間が大きくなることで、悪い結果になっていると判断すべきです。また売上債権の回転期間とのバランスも重要です。売上債権の回収期間が長く、買入債務の回転期間が短いような場合は、資金繰りに問題が出る可能性もありますので、適正な水準かどうかを判断する必要があります。
また、買入債務については、短い期間で支払うほうが割引されるような場合もあるでしょう。仕入原価低減の効果があるのであれば、支払期間が短くても良いと判断できます。
この指標のみで良い悪いを判断するのではなく、経営全体として適正な水準かどうかを分析することが大切です。
更に細かな分析をするために、分子を買掛金のみ、あるいは支払手形のみにして計算することもできます。
買入債務回転期間の業界ごとの集計を中小企業実態基本調査より作成したのが以下の表です。実態基本調査では買掛金・支払手形を一つにまとめていたため分解は出来ませんが業界平均との比較はできるでしょう。業界平均及び業界平均の経年比較の結果と遊離があるようであれば問題があるかもしれません。多面的な視点で分析をしていくことが経営改善につながります。
買入債務回転期間(平成19年度決算の統計より)
業種 | 買入債務回転期間(日) |
---|---|
全業種 | 41.68 |
建設業 | 43.43 |
製造業 | 51.10 |
情報通信業 | 28.77 |
運輸業 | 29.08 |
卸売業 | 54.32 |
小売業 | 29.21 |
不動産業 | 18.13 |
飲食・宿泊業 | 15.38 |
サービス業 | 19.17 |
自社の流動負債の回転期間を計算するには収益性分析のページをご利用ください。
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