中小企業の経営改善・経営革新を阻害するものとは?
先日中小企業の経営改善・経営革新の話題の中で、組織の不正について書きました。
不正は、「動機」「機会」「正当化」がそろったときに起こるとありました。これを押さえるために、多くの組織が、「機会」を制限する「管理の強化」を行っていると述べました。管理をすること自体が悪いことであるわけではありません。しかしながら、管理が強くなりすぎると弊害も多くなります。
管理を強化すると、ルールが増えるでしょう。ルールが増えれば、それに伴い管理書類や承認の手続きにも時間がかかります。多くの社員が「ルールを守るための時間」に終われ、いつしか「ルールを守るため」の活動が増えてしまいます。極端な話、それが目的になってしまう場合もあるかもしれません。これは本末転倒です。
しかし「自分たちでルールを決めてしっかりとルールに従い業務を行う」事が悪いことでしょうか?どんな企業にもルールがあります。それが悪いでしょうか。
これは難しい問題です。しかしながら企業は答えを出さないといけません。自分たちなりに。何が答えでしょうか。私は一言でいうと「バランス」なのだと思います。
中小企業にとっての変化の重要性
中小企業にとって、ルール自体が悪いものなのではありません。ただルールに囚われてしまうことが問題なのです。ルールが増え、手間が増えると組織の官僚化の悪い面が強化されてしまいます(官僚化自体には良い面もありますが)。
そして何より多くのルールや規則が「守らなければならない」という意識を強化し、中小企業の「変化」への妨げになってしまいます。これが非常に問題なのです。
景況が悪化し、市場の構造の変化がスピードを増している中、中小企業にとっても変化が求められます。その変化の成功の確率を上げるための手法としてバランススコアカード(BSC)の紹介もしてきました。しかし新しいことをしようとしても、今までの業務ルールがガチガチに固められていると変化への阻害要因となります。
企業の不正の話に戻りまして、不正が起こる要因の「動機」「機会」「正当化」の「機会」に着目した対策ばかりを行うと問題が発生することがわかりました。そこで、「動機」「正当化」に着目するのです。企業の一連の活動が企業の理念や目的に沿ったものであり、社員にとって納得のできるものであれば、不正を行う「動機」や「正当化」が抑えられるのではないでしょうか。企業の理念や目標に沿った活動を考え方を高く評価する企業であれば不正を行う「動機」や「正当化」を行う理由が少なくなるのです。
そして、この考え方は企業の「変化」を妨げるものではないということが重要なのです。企業のしっかりとした理念や目標を掲げてそれに向かって活動する一連の取り組みは「変化」そのものです。「今までのルールがこうだから、変えるわけにはいかない」という考えが優先されるものではありません。
不正が起こる「動機」「機会」「正当化」の要因を抑えることが必要です。それとは逆に企業の発展のための「変化」が求められます。
もちろんルールも大切です。それとともに、動機や正当化に着目した取り組みも大切ですね。しっかりした理念を持つこと、それに対する取り組みとして変化をしていくことが求められます。ルールとは企業の変化や発展を後押ししていくための前向きなものであるべきで、社員を押さえつけるものではないのです。この辺りが「バランス」であり、その考え方を体系化して、活動していく必要があります。そのための手法としてバランススコアカード(BSC)はよくまとまっていると考えられます。
企業の不正が起こるメカニズムとその問題についての考察は、企業の変化を阻害する考え方に繋がっているように思われます。そのあたりをしっかり整理し経営活動をしていく必要がありますね。